九頭竜湖
湖畔で物思う |
「『九頭竜湖』 か。確かに神話の生物が 棲んで居そうな佇まいだ」
「竜が居るかどうかは分からないが 湖底には集落が沈んでいる」
「水害で?」
「いや」
「この川は竜と呼ばれる程 幾度も氾濫を起こした。
治水対策のためダムが建設され 村は湖の底に――」
「仕方無いとは言え 故郷が犠牲になるのは無念だっただろうな」
『九頭竜ダム』
「皆は何処に行ったのだ?」
「長年水害と豪雪に苦しんできた村人達は 離村したらしい」
「健やかに 暮らしていると良いな」
「雨が強くなってきた。俺達も ここを離れよう」
「列車はまだか?」
「暫く来ないぞ。一日5本しかない」
「5本?!」
「転居した人の気持ちも少し 理解出来る気がする…」
「そうだな」
「ちなみに次の列車は 4時間後だ」
「!!」
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