夢の島
夏を先取り! |
「寒いし 南の方の島に行かないか」
「いいな」
「バリ島?グアム島?セブ島も…」
「いや」
「『夢の島』 だ」
「寒い!!」
「それはいかん。さあ 早く中へ」
「……」
「ジャングルだ!」
「暖かいなー」
「室温25℃。熱帯雨林の環境を再現している」
「湿度も高い。天井が湯気で曇っているぞ」
「見慣れない花ばかりだ。興味深い」
「エキゾチックだな」
「滝がある」
「本物のジャングルに 迷い込んだみたいだ」
「都会にこんな場所があったとは…」
「半世紀程前 此処は東京湾を埋め立てたゴミ処理場だった。
跡地に今の温室が作られるまでは、な」
「『夢の島』 ではなく 『ゴミの島』 だったのか」
「館内の冷暖房は 隣接する清掃工場の廃熱を利用している」
「科学的な施設なのだな」
「そろそろ出よう。寒さはもう平気か?」
「ああ」
「だが――」
「今度は本物の南の島に行きたい」
「今度な」
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