「港に軍艦が…」



「日本に現存する唯一の戦艦 『三笠』」
「何故此処に？」



「記念艦として保存されているのだ。見学するか」



「迫力あるな！」



『口径30cm主砲』
「壮観だ」



「ちなみに艦首は 皇居に向けられている」
「国王に敬意を表しているのだな」



「如何にも 『戦う船』 という佇まいだ」



「『最上艦橋』。日本海海戦では東郷司令長官が立ち 指揮を執った」
「敵艦から丸見えではないか！」



「命懸けで臨んだのだな」



「しかし うまく復元したものだ」



「復元？」
「戦後 鉄屑同然になっていたものを
　部品の寄贈や寄付金でここまで修復した。艦体以外 大半がレプリカだ」



「甲板の下に士官の部屋がある。行ってみよう」



「『長官公室』。会議や来賓の応接に 使用したそうだ」



「調度品も立派だな」



「部屋に機関砲が… 不思議な光景だ」



『医務室』



「『士官室』。食事は此処で摂っていたらしい」
「金曜日はカレーかな」



『司令長官専用浴室』



「狭過ぎる！！」



「私に船乗りは 務まりそうにない…」
「そうか。では地上に戻ろう」



「コンクリートで埋められているのか」
「『戦艦として復帰出来ないようにする』 という条件で
　保存が認められたのだ。仕方あるまい」



「もう二度と 戦いに赴く事は無いのだな」



「ところでお前 身を固める予定は？」



「無いな」



「退任後は？」
「分からん」



「早く身を寄せる港を 見つけて欲しいものだ」
「『待てば海路の日和あり』 とも言うぞ」