潮聲山 耕三寺
歴史に想いを馳せる |
「雨、上がったようだな。寺巡りに行こう」
「今からか? だいぶ足止め喰らったし 回りきれないぞ」
「大丈夫だ。
これから行く寺は、日本中の有名寺院を模した建物が 一堂に会しているらしい」
(のっけから 怪しい気配が…)
「着いたぞ 耕三寺。そして後ろに見えるあれは――」
「日光東照宮 陽明門 (のコピー)!」
「室生寺 五重の塔 (のイミテーション)!」
「平等院鳳凰堂 (のアレンジ)!」
「これは…アテナ像の……!!」
「いや 違うと思う」
「しかし ケバい寺だな」
「絢爛豪華と言え。和上が亡き母の供養の為 生涯をかけて建立したのだぞ」
「亡くなった後で?! 親孝行と言うには微妙だ。金持ちの道楽ではないのか?」
「仏道に入る前は 鉄鋼で財を成した実業家だったらしいが、
地元の方によれば 手間を惜しまず自ら柱に色を塗っておられたそうだ」
「確かに手抜きが一切無い。てっきり 子供騙しのテーマパークかと…」
「そんな風に思っていたのか。仏罰が下るぞ」
「広大だな」
「建物が 左右対称に配置されている。双児宮のようだ」
「立派な寺だ。和上の母親が見たら きっと喜んだだろう」
「!」
「……私もお前の為 何か形にしてやりたいのだが… 何を建てて欲しい?」
『 氷のピラミッド 』
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